moetudukeruonnaのブログ

娘が罹患した失統との闘い

胃カメラの前の歯磨き

私の父は 毎食後 必ず丁寧に歯磨きをしていた。
水だけで 何十分も掛けて歯ブラシを動かす。
 
まだ認知症もそれほど進んでいない頃だった。
よく嘔吐するので 町医者から総合病院を紹介してもらい
その日は胃カメラ検査を予約していた。
 
朝、父宅に迎えに行くと、歯を磨いている。
何となく不吉な予感がした。胃カメラ検査は前日の夜から絶食の指示が出ていたのだ。
 
総合病院へ認知症の年寄りを連れて行くのは かなりのエネルギーを必要とする。
父は脚が悪かったので 駐車場から病院入口まで歩かせると20~30分は掛かるし
事故る危険性もある。
私は入り口で父を降ろし、そこでじっと待っている様言い聞かせて 急いで駐車場に車を入れに行く。
 
呆けスイッチが入ったら 自分でトイレに行こうとして駐輪場を彷徨ってしまうのである。
私はいつも診察に連れて行く時は 父一人待たせる数分の間でもヒヤヒヤ気を揉んだ。
 
予約していた胃カメラの順番が回ってきて診察室に入る。
医師は父のお腹を 外から見ただけで分かったらしい。
「お爺ちゃん 朝 食べたでしょ?」
 
結局、来週の胃カメラ検査の予約をして その日は終わった。
 
私は、次の胃カメラの前日には 父宅に泊まり込んで
何も食べない様「はり込み」することを決意した。
 
一週間後の検査前の夜、
幸い 父は 夜中 何も食べなかったが、朝方3時頃だったろうか…
急に起き出して 昨日〇〇をどこそこに落ちているのを見つけたから
これから拾いに行って来る、と言う。
○○が何だったか 今 私は全然覚えていないが、あの冬の寒さの中で
真夜中 一人自転車に乗って 物を拾って来る父の気力・体力には感服した。
 
翌日の胃カメラ検査は無事に終了し、入院治療につなげる事が出来たが…
 
私は思う。
介護や育児・家事でもそうだが
おそらく 華々しく結果が見える社会の仕事、そのどんな仕事でも
その陰では 表に現われない 目に見えない無駄足が存在するだろう と。